「感じる服 考える服:東京ファッションの現在形」展

 現在、東京オペラシティ アートギャラリーでは、「感じる服 考える服:東京ファッションの現在形」展を開催している。この展覧会は、これまで日本で開催されてきたファッション展とは一味違った、新しい形のファッション展であり、ファッションを美術館において展示することの更なる可能性を示唆している。
 これまでのファッション展は、有名デザイナーの回顧展や、服飾史的な観点でのテーマ基づき、近世から現代までの西洋の衣服を展示するもの、他分野との関わりに焦点を当てて企画されるものがほとんどだった。しかし、今回の展覧会は、主に東京で活動中の中堅デザイナーに焦点を当て、作品そのものというよりも、コンセプトや普段の活動のあり方に着目した展覧会となっている。また、展示方法や出展作品から会場構成に至るまで、各ブランドが自ら考えたものであることも特徴的である。端的に表現すると、デザイナーや服飾の歴史や概念を俯瞰するものではなく、デザイナーの頭のなかを少しだけ覗いてみることができる、そんな展覧会であると言える。
 参加ブランドは、ANREALAGE、h.NAOTO、keisuke kanda、matohu、minä perhonen、mintdesigns、SASQUATCHfabrix.、SOMARTA、THATRE PRODUCTS、writtenafterwardsの10組。いずれも、独自のコンセプトやアプローチでファッションと向き合い、東京のファッションシーンに一石を投じてきているブランドである。

 各ブランドの表現はどれも趣向をこらした、それぞれのコンセプトや活動を鑑賞者に伝えようとする意志が強く感じられるものだった。ファッションを体験する最も身近で刺激的な場所であるショップを、実際のお店では体験できない仕掛けを用いて展示したもの、衣服や一般的に想像されるファッションからは一歩間をおき、大掛かりな装置でまさに「デザイナーの頭のなか」を展示したもの、ファッションという産業が否応無く背負っている問題を可視化しつつ、ブランドのコンセプトも確実に伝えようとするもの、映像やデスクトップ上の写真から実際の衣服や生地まで、様様なツールを用いて独特の世界観を伝えようとするもの・・。
 どのブランドがどのような展示をしているか明言は避けるが、各ブランドの普段の活動を知っている鑑賞者は、なるほど、とにやりとしたくなるような、普段の活動を知らない鑑賞者には、個々の活動に対する興味を掻き立て、さらにはファッションを考えることへのきっかけを与える、示唆に富んだ刺激的な展示であった。

 しかし、会場に入りまず目に付く鉄製の太い梁は、個人的には全体の会場構成としてやや疑問を感じるものだった。全体の会場構成は建築家の中村竜治氏が担当しており、ちょうど目の高さほどの梁が全体に張り巡らされ、それにより各ブランドのスペースが表現されていた。ホワイトキューブ状に空間を完全に仕切ってしまうことなく、ブランドごとの空間を創りだすことを可能にするという意味では効果的な演出であったが、梁をくぐるという動作による視線や思考の分断や、展覧会全体の一貫性、すなわち「東京ファッション」という塊の持つエネルギーを演出するための空間構成という点で、課題の残るもののように感じた。そしてこの課題は、衣服やファッションを美術館で展示することの困難さともつながるものであり、中村氏が今回試行錯誤のうえ選んだであろう新たな手法を端緒に、今後のファッション展の在り方について思考を巡らせることは不可欠であろう。
  
 上記のような問題は感じたものの、本展覧会はファッションを美術館で展示することの新しい可能性を提示する、非常に重要なものであり、普段のファッションとの関わりでは体験できない、衣服やファッションデザインとの関わりを経験できるものである。
 現在、東京という街で起こっているファッションや生み出されている衣服を、どのように「感じる」か、そしてどのように「考える」か、ぜひ会場に足を運び、それぞれの経験からそれぞれの解答を導き出してほしい。


「感じる服 考える服:東京ファッションの現在形」 展
2011年10月18日 ~ 2011年12月25日(金・土曜日は20:00まで)
東京オペラシティ アートギャラリー
http://www.operacity.jp/ag/exh135/

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